発展的に再構築 2
広域的に再構築 0
要改善 12
現行通り 7
拡充 5
このレポートから言えること
- 市営無料バスの判定は「要改善」と結論。判定人計25名のうち、最多は「要改善」の11名。作り直す側(発展的に再構築)が2名、続ける・広げる側(現行通り・拡充)が12名で、直して続ける側とこのまま続ける・広げる側が並んだ。
- 特記事項から見える最多の論点は、「おうかがい市バスとの統合・公共交通全体」(10人が言及)。路線・便の見直しも有料化の議論も、この組み合わせの問いの中に置かれた。事業単体の改善策ではなく、おうかがい市バスと合わせた市全体の移動手段の設計を示せるかどうかが、市民の結論に大きな影響を与えると予想される。
1. 特記事項から見える事業存続への6つの論点
AIによる整理
傍聴者を含む全属性26名では「要改善」12名・「現行通り」7名・「拡充」5名・「発展的に再構築」2名と割れ、直して続ける側とこのまま続ける・広げる側が並んだ。特記事項から論点が読み取れた23名(判定人22名・傍聴者1名)で最も多く挙がったのは「おうかがい市バスとの統合・公共交通全体」の10人で、無料バス単体の存廃ではなく、おうかがい市バスと合わせて市全体の移動手段として設計し直せるかが最大の論点になった。無料のままでは続かないという認識は結論をまたいで共有される一方、現行車両のまま運賃を設定できるのか、路線・ダイヤはどの利用データで設計されているのか、おうかがい市バスとの役割分担をどう決めるのか——この3点が未解決のまま判定に持ち込まれた。
属性を絞り込み中。図と論点カードの内訳は絞り込みに追随する。本文と「この図から読めること」の人数は、全属性のときの値である。
評価シートの特記事項を意味単位に分け、各人の結論(発展的に再構築、広域的に再構築、要改善、現行通り、拡充)とその理由を読み分けた。結論が違っても同じ論点や同じ理由を書いていた箇所を、下の図に集めた。
論点ごとに、どの結論の人が何人いるかがわかる。帯の幅は、その論点に言及した実人数である。
この図から読めること
- 最多はおうかがい市バスとの統合・公共交通全体の10名。作り直す側から拡充側まで4つの結論に分かれており、無料バス単体の存廃ではなく、2事業の組み合わせの設計が最も広く共有された論点になっている。
- 有料化の是非(7名)は要改善の6名に集中している。無料の続けにくさへの認識は広いのに、この論点を作り直す側から書いた人はいない。
- 路線・ダイヤ・運行情報(7名)と利用者ニーズ(通学・土日・夜間)(3名)は、続ける・広げる側からの言及が過半。続ける側も無条件の支持ではなく、便と情報の直しを条件にしている。
発展的に再構築広域的に再構築要改善現行通り拡充
母集団: 特記事項に論点が読み取れた23名(市民判定人18・外部委員4・傍聴者1)。帯の幅はその論点に言及した実人数。
それぞれの結論とその論点の分布
左に結論、右に論点を置き、その結論の人がその論点を語った人数で帯を引いた。
この図から読めること
- 要改善の11人は延べ16回、4つの論点に帯を伸ばしている。最も太い帯は「有料化の是非」の6人で、直して続けるための条件が料金のあり方に集中している。
- 拡充の5人も延べ9回言及し、帯は統合・路線・利用者ニーズへ広く伸びる。広げる側の要望は、具体的な運行の直しに向かっている。
- 発展的に再構築の2人の帯は「おうかがい市バスとの統合・公共交通全体」と「運転手・持続可能性」に限られ、作り直す理由は運行の細部ではなく構造の側にある。
発展的に再構築広域的に再構築要改善現行通り拡充
母集団: 特記事項に論点が読み取れた23名(市民判定人18・外部委員4・傍聴者1)。帯の幅はその論点に言及した実人数。
1. おうかがい市バスとの統合・公共交通全体
10名が言及
発展的に再構築 2広域的に再構築 0要改善 4現行通り 2拡充 2
← 作り直す側このまま続ける・広げる側 →
- 共通認識
- 無料バス単体ではなく、おうかがい市バスと合わせて市全体の移動手段として設計し直すべきだという問題意識は、発展的に再構築から拡充まで4つの結論すべてから出ている。2事業は同じ日の会議で続けて判定され、リソースの重なりが繰り返し指摘された。
- 分かれる点
- 組み替えの深さ。公共交通としての管理機能ごと統合する案、利用の薄い時間・路線をやめて運転手をおうかがい市バスへ回す案、バスの路線よりも家族が運転できない人のカバーへ行政の軸足を移す案まで、同じ問題意識から踏み込みの違う処方が並んだ。おうかがい市バスとの役割分担をどう決めるかは、両事業に共通の確認事項になる。
根拠となる発言の原文(2件)
要改善外部委員「2事業については、太田市全体の移動支援としての組合せの最適化を図って欲しい。」
拡充市民判定人「なんで おうかがい市バスと別運用?別に考えないで 公共交通としての管理機能を統括すりゃいいじゃん リソースは一緒なんだし.」
この論点の全発言を見る →
発展的に再構築 0広域的に再構築 0要改善 3現行通り 2拡充 2
← 作り直す側このまま続ける・広げる側 →
- 共通認識
- 路線・ダイヤが利用実態に合っていない、どこをいつ走っているかが伝わっていないという指摘は、要改善・現行通り・拡充の3つの結論に共通する。この論点を作り直す側から書いた人はいない。
- 分かれる点
- 直す単位。利用率の低いバス停の精査、利用状況データを活かした増便・時間変更(傍聴者からはAIダイヤや天候別利用率の提案)、GPSによる車両の位置情報の提供と、求める見直しの粒度が違う。いずれも路線別・時刻別の利用データが前提になるが、公開資料に乗車人員の内訳はない。
根拠となる発言の原文(2件)
要改善市民判定人「路線の見直し、(利用率の悪いバス停の精査)」
現行通り市民判定人「バス停まで遠い! なかなか利用出来ない。」
この論点の全発言を見る →
発展的に再構築 1広域的に再構築 0要改善 3現行通り 0拡充 1
← 作り直す側このまま続ける・広げる側 →
- 共通認識
- 運転手の確保と人件費の高騰で今の形を続けられるのか、という不安は、発展的に再構築・要改善・拡充の3つの結論に共通する。外部委員からは、無償では事業の継続性に問題があるという指摘と、大型2種免許の取得者減少に伴う人件費高騰への不安が挙がった。
- 分かれる点
- 担い手の確保のしかた。自動運転バスの営業運転を参照する声、市の職員として運転手を雇用しバスをリースにする案、公共ライドシェアの考え方を取り入れる案と、代替手段の候補が分かれる。どの案も、スクールバスの運転という本務との両立が前提になる。
根拠となる発言の原文(2件)
要改善市民判定人「有料化しても良いのではないか 交通弱者が増えていく中で、持続可能な事業にする必要があると考える」
拡充市民判定人「市の職員としてバスの運転手さん雇用できないの? お給料割高にして、バス リースとかにして」
この論点の全発言を見る →
発展的に再構築 0広域的に再構築 0要改善 6現行通り 0拡充 1
← 作り直す側このまま続ける・広げる側 →
- 共通認識
- 無料のままでは続かない、必ずしも無料でなくてもよいという認識は、要改善と答えた人たちだけでなく拡充を求める人からも出ている。無料バスと有料バスに同じ路線があることも指摘された。
- 分かれる点
- 有料化の入り口と条件。全面的な有料化のほかに、大きな荷物を載せたい人に限る有料化という限定案もある。有料にするとバスの大きさや運転免許の問題が生じるという車両側の制約も条件に挙がった。運賃を収受すると道路運送法の許可・登録の枠組みに入るため、車両と担い手の制約は制度の上でも同じ分岐を指している。
根拠となる発言の原文(2件)
要改善市民判定人「無料について有料にした際のバスの大きさ.運転免許の問題が生じる(マイクロバス使用中)」
拡充市民判定人「料金をとってもいいのでは。」
この論点の全発言を見る →
発展的に再構築 0広域的に再構築 0要改善 0現行通り 1拡充 2
← 作り直す側このまま続ける・広げる側 →
- 共通認識
- 事業の必要性を前提としたうえで、通学・土日・夜間など今カバーされていないニーズがあるという指摘は、現行通り・拡充の側から出ている。土日運休で需要と運行時刻が合っていないという記述もある。
- 分かれる点
- 広げる範囲。市内の高校へ市内の生徒が通えるようにする通学利便性、土曜だけでも・シティライナーだけでもという段階的な運行拡大、夕方への時間延長と、要望の焦点が違う。一方で現行通りの側には、スクールバスの空き時間運用という営業目的を伴わない事業のため現行通りとする他はない、という見方もある。
根拠となる発言の原文(1件)
拡充市民判定人「高校の通学利便性を上げてほしい. 少なくとも市内の高校に、市内の生徒が行けるようにする必要はある.」
この論点の全発言を見る →
発展的に再構築 0広域的に再構築 0要改善 0現行通り 0拡充 1
← 作り直す側このまま続ける・広げる側 →
- 共通認識
- 事業への関心・認知の不足は、拡充を選んだ判定人自身からも挙がった。「無料バスとは知らなかった」「太田市内にバスが走っているのを知らない人が多い」という記述は、有料化や統合を語る欄にも現れている。
- 分かれる点
- この論点を特記事項に書いたのは1名で、対立の構図はまだない。認知がなければ利用も評価も生まれないなかで、周知すれば利用がどう変わるかが残る問いになる。
根拠となる発言の原文(1件)
この論点の全発言を見る →
2. 似た事業に取り組んでいる自治体の判断
-
スクールバスに住民を乗せている事例
-
京都府京田辺市:普賢寺小学校の送迎用スクールバスに、打田・高船・天王地域の住民が混乗する実証実験を行っている。国庫補助金(共創モデル実証運行事業補助金)を活用した取り組みで、背景には、市南部の路線バスが1日2往復4便しかなく、運転士不足で増便が難しいという事情がある。※出典としていた京田辺市の案内ページは現在404で、この実証の現況は2026年8月29日時点で公式ページから再確認できていない。登下校時間帯は児童専用、それ以外は一般開放という時間帯分離型で、太田市の現行方式と同じ型にあたる。ただし京田辺市は実証の段階であり、太田市はすでに定着した運用である点が違う。
-
通学需要を別立てで足した事例
-
岐阜県中津川市(蛭川地区):2020年に民間バス路線が撤退したのを機に、コミュニティバスをデマンド型へ再編し、あわせて予約制の高校生通学バスを追加した(中津川市)。2026年時点も、地域内デマンド便(大人200円)と高校生通学便(定期券1か月8,000円)の2系統で続いている。既存の路線を広げるのではなく、通学という需要に別の運行形態をあてる選び方である。
-
国の制度上の位置づけ
-
文部科学省と国土交通省は2024年10月の連名通知で、スクールバス車両を「多くの者を乗車させることができる地域の輸送資源」と位置づけ、空き時間のコミュニティバス等への活用を有効とした(「児童生徒等及び地域住民の移動手段の確保に向けたスクールバスと地域交通の効果的な活用について」)。住民の混乗は、児童生徒の通学の安全・安心の確保と保護者・地域住民の理解が前提で、へき地児童生徒援助費等補助金で整備から6年以内の車両を住民に使わせる場合は文部科学大臣の承認が必要になる。同じ通知には、スクールバスの運行をやめて路線バス等へ集約する選択肢も並んでいる。
-
「完全無料から有料へ」「有料から完全無料へ」という転換の先行事例は、今回の調査では見つからなかった。無料と有料のあいだを行き来した例は示せていない。
関連する行政事業の記録
自治体の事業仕分け・行政評価の公開記録を検索できる「Jレビュー」と、各自治体・国の公開資料から、路線・利用実態・運賃・担い手の持続可能性を考えるうえで関連する記録を抜き出した。
- 注1 サンキー図だけは帯の交差が少なくなる順に置いているが、番号は共通である。「作り直す」は発展的に再構築と広域的に再構築を、「続ける・広げる」は現行通りと拡充をまとめた呼び方で、図の色は5つの判定のままである。並び順に使った「合意の広さ」は、全体レポートの2節と同じ指標で、3つの立場(作り直す・要改善・続ける/広げる)それぞれについて、その立場の人のうち何人がその論点に触れたかを割合にし、3つを掛け合わせた値で降順に並べている。掛け算なので、1つの立場からしか挙がらない論点は自動的に下がり、立場をまたいで挙がる論点が上に来る。人数の少ない立場で値が跳ねないよう、割合は「言及した人数+1」÷「その立場の人数+2」として数える。単純な言及人数の多い順ではないため、5名の運転手・持続可能性が7名の有料化の是非より上に来る。並べ方そのものを比べた試作は試作のバタフライ図にあり、同じデータをスパイン、ヒートマップ、沖積図などに置き換えた案も同じ場所に並べてある。
- 傍聴者の欄は1名分である。傍聴者の回答は現地の倍速アンケートによる参考値で、当日の集計には含まれていない。1名の回答を傍聴者全体の傾向や総意として読むことはできない。母数が小さいため票差から因果は読めず、挙がらなかった論点を反対や関心の不在として読むこともできない。
-
数値の一覧表(各グラフの出どころ)
| 月別乗車人員(2018年度) | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
| 西バス系統(人) | 1,119 | 2,043 | 1,919 | 2,270 | 2,291 | 2,125 | 2,611 | 2,630 |
| 東バス系統(人) | 336 | 759 | 1,088 | 1,073 | 1,121 | 835 | 1,058 | 932 |
| 公共交通関連の当初予算 | 令和7年度 | 令和8年度 案 |
| 市営無料バス運行事業 | 23,289千円 | 21,783千円 |
| デマンドバス(おうかがい市バス)運行事業委託料 | 52,708千円 | 57,262千円 |
| 公共交通機関運行事業補助金 | 20,501千円 | 20,420千円 |
| 地域公共交通計画作成 新規 | — | 11,000千円 |
乗車人員は「太田市地域公共交通網形成計画(改訂版)」(平成31年3月)p.36 図23の数値ラベルを転記。予算は太田市「令和7年度当初予算(案)の概要」p.14・「令和8年度当初予算(案)の概要」p.16。万円表記は千円単位の原数値からの換算(端数処理あり)。
- 太田市「市営無料バスのご案内」・太田市「シティライナーおおた」・太田市「令和8年度当初予算(案)の概要」(PDF)・太田市「地域公共交通網形成計画(改訂版)」(PDF)
- 本ページは2026年8月28日版。公式資料と当日の記録を反映したが、担当課の確認を経ていない。ヒアリングのあと、担当課の回答と訂正を併記した版に更新する。それまで一般には公開しない。事実誤認はヒアリングの場で指摘してほしい。訂正はこのページと全体の分析レポートに反映する。
- 作成は合同会社多元現実(構想日本のクライアントワーク)。発言の整理と草稿作成にAIを使い、引用の原文一致と数値の出典は人が確認した。数値の出典は上の一覧表のとおり(このほか運休日等は太田市の各案内ページ、5〜14歳人口は国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」2023年推計による)。2節の事例は、京田辺市および中津川市の公表資料、文部科学省・国土交通省の連名通知、国土交通省九州運輸局「自家用有償旅客運送ハンドブック」、Jレビューの公開記録による。10事業を横断した比較、手法、検算、データ来歴は全体の分析レポートの付録で確認できる。